20230529

 

仕事の後、軽く夕食を済ませて外に出た。

 

自宅から徒歩5分のところにあるショッピングモール内の下着屋さんで、採寸をお願いして、礼儀的にひとつ買って店をあとにする。

化粧品売り場といい、性別を強く感じさせる場所はどこか居心地の悪さを感じてしまう。

 

梅雨入り直前の濡れた街をぐるっと一周して、駅の下のプロントに入る。

「22時ラストオーダーですが、大丈夫ですか?」

パーマをかけた若い男の子が早口で投げかけてくるのに、大丈夫です。と返事して奥の席に進む。22時半に閉店なのは知っていて、その時間に自然と追い出してもらえるのが好都合なのだ。

 

21時半。

先にサラリーマン風の男性が2人、酔った様子で会社の愚痴で盛り上がっていた。

「だいたい、言ったってなおらないんだから困るよなあ!」

どこの会社も同じようだと思う。

 

赤ワインを頼んで、文庫本を開く。

江國香織さんの「やわらかなレタス」。

私は、カフェに一人で行って過ごすということをほとんどしない。(誰かとの待ち合わせの時間調整くらいだ)

ただ、彼が時々そうするというので真似してみただけなのだった。

あっという間に22時になる。さっきの彼がラストオーダーを取りにきて、おかわりを頼み、ナッツも頼もうかと思ったけど、きっと塩付きだろうなと思ってやめておいた。

 

 

さっと2杯目を飲むと首の後ろあたりにじわっと火が点ったような感覚になり、会計をして店を出る。

「お客さん!」

さっきの若い店員さんが追いかけてきて、振り向くと、

「1円忘れてます!」だって。

それは私が床に落ちているのを見つけて、テーブルにのせてきたものだった。

まじめさとかわいらしさに笑ってしまった。