2023050501

 

ゴールデンウィーク真っ只中の鎌倉は、行き交う人でまさにごった返していた。

世間は疫病と共存することを決めた。みんなこの時を待っていたのだ。

 

私たちは運良く喫茶店にすべりこむことができ、モーニングセットをそれぞれ頼んだ。

この店に入るのは何度目かだけれど、誰と来るかで景色が随分違う。

「僕は長生きしなくちゃいけない」と言う彼の食事は、いつも心配になるほど少ない。

 

空腹が少し落ち着くと、また人の間をすり抜けてフクロウを見に行った。

夜行性の彼らは昼の間、本当は眠っていたいはずだが、ジロジロみられて好きに撫でられて多少不機嫌そうにしている。まして連休中、ストレスMAX状態だろうと思う。入ってから気づいた。

彼はと言えばフクロウが口を開けて攻撃態勢に入っているのに全然手を引っ込めなくて焦る。

しかし360度回転するその頭をくるっと後ろに向け、枝の端っこに避難するそのすがたはなんとも、(かわいそうではあるものの)健気で、間違いなく可愛かった。人とは自分勝手。

 

お酒の好きな私たちは、そろそろビールを飲もうということで意見が一致した。

今日はとてもいい天気で、5月らしく濃い緑が強めの風に揺らされていた。夏に向かっている。

「月」、「星」のビールをそれぞれ選択し、一口含むと焦がしたような風味がする。交換して、彼のをもらうと、今度は柑橘のような。おいしくてからだが震えた。

「私、こっちの方がいい」というと「僕もこっちの方が好き」と言って交換してくれた。

そうでなくてもそう言って交換してくれるであろうので、本当のことはわからない。

私たちのそばにいた女性が鯉のぼりの旗を振って歩きだした。ツアーガイドさんだ。集まってきたのは、カラフルな原色の服を着た中東系の人たち。

 

それから八幡宮を散策しておみくじを引く、というお決まりの遊びのあと、彼が海をみたいというので海岸まで歩く。

しかし進むにつれ、どんどん、とんでもない風が吹いていた!それも渇いた砂埃を連れて。

私はその勢いに不安になったりしていたが、なのに彼は妙に楽しげに、アメリカンバイクの群れを見て喜んだりしていた。根本的に楽観的なのだ。

やっとのところでたどり着いたが、本当にたどり着いただけで、目も開けられずそのまま引き返した。(彼がへっちゃらに海岸に出ようと言い出さなくて安心した。)

帰路にすれ違う、これから海へ向かうすべての人へ忠告したい気分だった。(中には赤ちゃんもいた)

防災のアナウンスが聞こえた気がして、それが石川県の地震のことだと知るのは少しあとになる。