20230523
昨晩は遅くまで彼と電話していた。
退職するあたって、残った有休をどう振り分けるか相談したかったのだ。
私はなんでも彼に相談する。彼は大人だし、私よりずっと物事の選び方が上手だと思うから。
彼は私のことを、名前に「さん」付けで呼ぶ。
なんとなく他人行儀な気がして、「ちゃん」にしてよ、と言ったのだけど、彼は彼のこだわりの元、そうしてはくれなかった。
「大切にしなければいけないという意識を忘れずにいられる気がする」、らしい。
呼び方なんて関係ないじゃない、変なの。と言ったが、意外に我が強いひとだということを私はもう知っているので、では好きにしてください、と言った。(以前はそれに加えて敬語だった、それは文章のやり取りにおいて今も)
通話しながら、彼はブランデーを、私は週末2人で開けて飲みきれなかったワインを、それぞれ飲んだ。
話せば話すほど、私と彼は全然ちがう。
時々、それが途方もなく寂しく、置き去りにされたような気持ちにさせる。
最近、うさぎが外遊びをしなくなって少し心配だ。眠っている時間が多くなったように思う。
ごはんはよく食べているし、排泄も問題なさそうなのだけど...
ネットで調べると、加齢によって落ち着きが出てくるとそうなるうさぎもいるらしい。
一日中ケージの中にいて、じっとしているだけなんてつまらないだろうと思うのは人間の勝手なのだろうか。
昔、家に迷い込んできたヤモリを捕まえて、飼ったことがある。
勤務先の社長にその話をすると、「早く逃がしてあげなさい」と言われて、
「私のところにいれば、苦労してご飯を探すことも、危険な目に遭うこともないじゃないですか」と返したが、
「そりゃ、人間のエゴだ」と言われてしまった。
結局ヤモリは突然に死んでしまった。眠っているのか、死んでいるのかわからないくらい綺麗な死体だった。
私はそれをベランダの葉っぱの下に置いた。
まだ生きているのかもしれないと思ったから。
しかしヤモリはずっと綺麗なまま、葉っぱの下に有り続けた。
20230509
繁忙期で休日出勤になるだろうと予定を入れないでおいたのに、予想が外れてしまった。
急に休みになってもどうしていいのかわからないから社畜で困る。
今日はとても天気がいいので、そういう日にしかできない掃除をすることにした。
うさぎも運動不足であろうので、放し飼いにする。
床を拭いたり、壁を拭いたりして、汗をかいたのでお風呂をためる。
残り湯でぬいぐるみを洗いたかったのだ。
自分が洗い上がったあと、浴槽で、浮き上がってこようとする羊とシベリアンハスキーのぬいぐるみを、押さえつける。なんとなく罪悪感。それをネットにいれて、洗濯機で更に脱水にかける。
私がこういったものを買わないようにしているのは、どうしたって処分に困るからだ。目のあるものを捨てるのは心苦しすぎる。
以前母にその話をすると、「私が代わりに捨ててあげるよ?そういうの、全然平気だし」という返事で、相変わらず私とはタイプの違うひとだと思った。間違いなくこの人の体から生まれたのに。
今日は家から出ないと決めて、缶ビールを開ける。一口飲むと、汗をかいた体に染みた。
うさぎは楽しそうに走り回ったり、家具の隙間に隠れたりして遊んでいる。
たまに家を齧ろうとするので、制止する。
飲み友達のおじさんから連絡が来て、今日は誘われたら断ろうと思っていたけど、猫が元気になった報告だった。
彼のくれた雑誌をめくりながら、ハイボールの缶も開けてしまうと、眠くなってそのまま少し寝てしまった。
BOTAN ADEYAKA
道中、ネイルショップができていたので覗く。
「BOTAN ADEYAKA」という名前の、紅色のマニキュアを買ってくれた。もう少し朱色がかったののもいいなと思ったけど、彼もそれがいいと言うので俄然それがよくなってしまった。意見が一致して嬉しくなる。
私が好きなお店のひとつ、「ミルクホール」へ。
彼はアイスコーヒー、私はカフェオレを頼んだ。
薄暗く、アンティークの並んだこの店に、彼は(ほぼ)初めて来たはずなのに、何度も訪れている私よりずっと似合っていると思う。
オリジナルフリーペーパーの、「ミルクホールタイムズ」を貰って店を出る。
なにか出来合いのものとお酒を買って帰ろうという提案にのって、スーパーへ寄って帰宅する。
何しろ砂埃で肌も服もがさがさになっていたので、交互にシャワーを浴びた。
顔やからだがひりひりして、子供の頃海水浴から帰ったあとのそれと、よく似ていた。
いまどき、スーパーのお惣菜は侮れない。
彼の選んだワインを飲みながら少しずつそれを食べた。2人とも味の濃い、渋いワインが好き。
オレンジだと思って切ったのは、八朔だった。私はお酒を飲みながら食べるフルーツが好き。
案の定食べきれない分は、翌日の私のお弁当にすることにした。
2023050501
ゴールデンウィーク真っ只中の鎌倉は、行き交う人でまさにごった返していた。
世間は疫病と共存することを決めた。みんなこの時を待っていたのだ。
私たちは運良く喫茶店にすべりこむことができ、モーニングセットをそれぞれ頼んだ。
この店に入るのは何度目かだけれど、誰と来るかで景色が随分違う。
「僕は長生きしなくちゃいけない」と言う彼の食事は、いつも心配になるほど少ない。
空腹が少し落ち着くと、また人の間をすり抜けてフクロウを見に行った。
夜行性の彼らは昼の間、本当は眠っていたいはずだが、ジロジロみられて好きに撫でられて多少不機嫌そうにしている。まして連休中、ストレスMAX状態だろうと思う。入ってから気づいた。
彼はと言えばフクロウが口を開けて攻撃態勢に入っているのに全然手を引っ込めなくて焦る。
しかし360度回転するその頭をくるっと後ろに向け、枝の端っこに避難するそのすがたはなんとも、(かわいそうではあるものの)健気で、間違いなく可愛かった。人とは自分勝手。
お酒の好きな私たちは、そろそろビールを飲もうということで意見が一致した。
今日はとてもいい天気で、5月らしく濃い緑が強めの風に揺らされていた。夏に向かっている。
「月」、「星」のビールをそれぞれ選択し、一口含むと焦がしたような風味がする。交換して、彼のをもらうと、今度は柑橘のような。おいしくてからだが震えた。
「私、こっちの方がいい」というと「僕もこっちの方が好き」と言って交換してくれた。
そうでなくてもそう言って交換してくれるであろうので、本当のことはわからない。
私たちのそばにいた女性が鯉のぼりの旗を振って歩きだした。ツアーガイドさんだ。集まってきたのは、カラフルな原色の服を着た中東系の人たち。
それから八幡宮を散策しておみくじを引く、というお決まりの遊びのあと、彼が海をみたいというので海岸まで歩く。
しかし進むにつれ、どんどん、とんでもない風が吹いていた!それも渇いた砂埃を連れて。
私はその勢いに不安になったりしていたが、なのに彼は妙に楽しげに、アメリカンバイクの群れを見て喜んだりしていた。根本的に楽観的なのだ。
やっとのところでたどり着いたが、本当にたどり着いただけで、目も開けられずそのまま引き返した。(彼がへっちゃらに海岸に出ようと言い出さなくて安心した。)
帰路にすれ違う、これから海へ向かうすべての人へ忠告したい気分だった。(中には赤ちゃんもいた)
防災のアナウンスが聞こえた気がして、それが石川県の地震のことだと知るのは少しあとになる。